21.地方自治 21−1 地方自治の意義       第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。 1.地方自治の性質  (1)意義  民主主義(国民主権)…中央の議会制を補完し、「民主主義の学校」としての役割を果たす。     自由主義(権力分立原理)…中央の統一権力の強大化をおさえて、権力を他方に分散させる。  (2)地方自治の保障の性質    *地方自治の保障の性質をどのように捉えるべきか。     →固有権説:地方公共団体の自然権的・固有権的(前国家権的)な基本権の保障である。   c.主権の単一、不可分性を無視することになる。   伝来説:地方自治は国家の統治権に伝来し、国の政策的自制に基づく承認ないし国の委任に根拠するものである。       地方団体は、国家の統治機構の一環として位置づけられる。国は地方自治保障の範囲を法律によって定め     ることができる。保障否定説。      c.「地方自治の本旨」に特別の法的意味を認めないことになり、憲法第8章で特に地方自治を規定した意味        がなくなってしまう。   制度的保障説:地方自治の保障とは、地方自治という歴史的・伝統的制度を保障したものであって「地方自治の本         旨」は、国の法律によっても侵害できない地方自治制度の本質的ないし核心部分を意味する。 2.地方自治の本旨  …法律を持ってしても侵害できない本質部分   住民自治…地方自治が住民の意思に基づいて行なわれるという民主主義的要素(中央の議会制の補完)    具体化 地方公共団体の長、議会の議員の直接選挙 一の地方公共団体のみに適用される特別法の住民投票 直接請求の諸制度   団体自治…地方自治が国から独立した団体に委ねられ、団体自らの意思と責任のもとでなされるという自由主義的要素。    具体化 94条 財産の管理  事務を処理  行政を執行  条例を制定 21−2 地方公共団体の権能     1.地方公共団体の意義  (1)地方公共団体の意味   …事実上住民が経済的文化的に密接な共同関係を営み、共同体意識を持っているという社会的基盤が存在し、沿革的に    見ても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能    を付与された地域団体(判例)   *都道府県と市町村という二段階制の地方公共団体が憲法上の保障となっているか。B    →二段階立法政策説:憲法上の保障となっていない。 r.全て地方自治の本旨に基づいて法律で定められることを要求するにとどまる。 二段階保障説 :都道府県と市町村という固定した二重構造を憲法上保障している。    r.憲法に地方自治に関する規定をおくに至った歴史的背景を強調すべきである。 二段階保障説 (司通):二段階の地方公共団体の存在を憲法上の要請とするが、上級の地方公共団体(現在は都          道府県)について道州制のような地方の行政の広域化に対応した地方公共団体を設ける   かは、地方自治の本旨に反しない限り立法政策の問題である。    r.憲法制定にあたって市町村及び都道府県を前提にして地方自治を保障した歴史的背景   を尊重しつつ、時代の変化にあわせて変更する可能性も認めるべきである。   *東京都の特別区は憲法93条の「地方公共団体」にあたるか。B    →否定説(通判) r.上述の判例の基準に照らして地方公共団体には当たらないとする。 肯定説 r.23区以外の住民に対しては二段階制が保障されるのに、23区の住民については都という地方公共           団体しか有しないのは合理性がない。  (2)地方公共団体の組織   第93条  地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。    地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接こ        れを選挙する。     中央政府   地方自治体   議会と行政  国会が最高機関  議会と行政は対等(最高機関たる地位には立たない)   府の関係  解散あり    解散あり(但し制限あり)    不信任決議あり  不信任決議あり。(厳格)   民主制   間接民主制が原則  間接民主制が原則    直接民主制は例外  直接民主制も多く採用    憲法改正 レファレンダム    地方特別法 イニシアティブ    国民審査 リコール    長の公選制    議会の解散請求    地方特別法   代表制   民意の統合を重視  民意の反映を重視    自由委任(免責特権) 命令委任(免責特権なし)   特徴    独裁の危険もあり、直接民主制 住民に十分判断可能なみじかな問題が多く、独裁の危険も      への慎重な姿勢  少ないので、直接民主制が多く取り入れられる。    統一的な国家意思を形成すること 民意を十分に反映させて中央の議会制を補完する役割を重視    の必要性から民意の統合を重視 2.地方公共団体の権能  (1)自治事務   第94条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を       制定することができる。     公共事務(固有事務)    …直接に住民の福祉を増進させるための本来の公共事務(水道、下水道、ガス、学校・病院等の施設の設置管理に関     する事務等)と、地方公共団体の存立のための事務(その組織、人事財務に関する事務)    委任事務    …地方公共団体の存立目的たる事務ではないが、個々の法令によって地方公共団体に委任された事務( 国民保険)    行政事務    …地方公共の利益に対する侵害を防止または排除するために、住民の権利を制限し、自由を規制するような権力の行     使を伴う事務( 道路交通の取締り、デモ行進の規制)  (2)機関委任事務   …地方公共団体の長その他の機関に委任された国などの事務    廃止、自治事務と法定受託事務の二本柱に。 3.条例   第94条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を       制定することができる。   (1)意義  条例…地方公共団体がその自治権に基づいて制定する自主法 条例は、地方公共団体の事務に関する事項しか規律できない。 その範囲内では、国家法とは原則として無関係に独自に規定を設けることができる。  (2)条例制定権の根拠    *条例制定権の根拠をどのように解すべきか。A     →92条説:憲法の保障する自治権の1つとしての条例制定権の根拠は既に92条に含まれており94条はこれを受        けて条例制定権を保障している。   94条説(司通):条例制定権の根拠は、94条である。   r.日本国憲法のもとでは国会が唯一の立法機関であるから、地方公共団体が条例を制定するために       は特にその例外を認める規定が必要であり、94条が創設的に条例制定権を付与するものである。  (3)範囲と限界   1)自治事務に関するものであること    *財産権の規制は条例によってできるか。B →肯定説:条例による財産権の内容の規制も許される。 r.地方公共団体がその行政を執行するために条例を制定することを認めた憲法94条の規定は、立法を         国会の専属管轄とした憲法41条の例外をなす。条例は地方議会という民主的基盤に立って制定され      るものであり、実質的には法律と差異がない。  否定説:財産権の内容の規制は法律による必要があるが、財産権の行使の規制は可能である。 r.内容と行使を泰然と区別することは極めて困難である。    *条例にその違反に対する制裁として罰則を定めることが、法律によらない科刑を禁止する31条、法律の委任なく     して政令に罰則を設けることを禁止する73条6号に反しないか。B+ →憲法直接授権説(佐藤幸):94条の条例制定権には罰則制定権が当然含まれており、罰則制定のための法律に    よる条例への委任規定は不要である。    r.許容性−条例は住民の代表機関である議会の議決によって成立する民主的立法であり、実質的       には法律に準じるものである。  必要性−条例制定権の実効性を担保するため必要である。  一般的・包括的法律授権説:94条の条例制定権は当然に罰則制定権を含むものではなく、刑罰権の設定には地        方自治法14条5項のような法律の授権が必要であるが、条例への罰則の委任は、   一般的・包括的委任でよい。    r.罰則権の制定は本来国家の事務であって地方自治権の範囲に属しない。しかし条例は行政府の       命令と異なり民主的立法であり実質的に法律に準じるものであるから、命令への委任が個別的・   具体的委任を要するのと異なり、一般的・包括的委任でよい。  限定的法律授権説(判例):刑罰権の設定には法律の授権が必要であるが、その内容が相当程度に具体的であり、   限定されていればよい。    r.自治立法であり、法律に類するものである。    *条例で課税することが、租税法律主義(84条)に反しないか。B →通説)反しない。r.租税法律主義は、行政権による専断的な課税を防止するものであるから、民主的な手続に        よって制定された条例は「法律」に準じるものと解してよい。   2)法律の範囲内であること    *国の法令で定める規制基準よりも厳しい基準を定める「上乗せ条例」や法令の規制対象以外の事項について規制を行     なう「横出し条例」は「法律の範囲内」(94条)か。B →法律先占論:国の法令が明示または黙示に先占している事項については、法律の明示的な委任がない限り条例を     制定しえない。c.国は法律を持ってしさえすれば任意に地方の事務を国の事務に吸い上げること ができるということになってしまい妥当でない。  判例)条例が国の法律の範囲内にあるかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれ      の趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触がないかどうかによって判断すべきである。    r.地方自治を最大限に尊重すべきである。  (4)条例による地域的取扱いの差異と平等原則    *条例による処罰に地域的差異があることが、14条の法の下の平等に反しないか。B     →通説)反しない。r.条例制定権が認められている以上予期されたことである。